食事の基礎ガイド

犬の給餌量・カロリーの基本|RER・DERの考え方から、体型チェックと体重管理まで

最終更新:2026年6月18日
犬の給餌量・カロリーの基本|RER・DERの考え方から、体型チェックと体重管理までのイメージ

「この子、一日どれくらいあげればいい?」——ペットショップで教わった量、パッケージの目安、ネットで見た数字。情報は多いのに、なぜかどれもピンとこない、という経験をしたことはないでしょうか。

給餌量は「決まった正解」がある話ではなく、その子の体重・年齢・活動量・体型を組み合わせて出発点を計算し、体型を見ながら調整し続けるものです。難しく感じるかもしれませんが、基本の考え方を押さえれば日常の判断がずっと楽になります。

給餌量の計算は「2ステップ」で考える

犬が1日に必要なエネルギー量は、次の2段階で計算します。

Step 1. RER(安静時エネルギー要求量)を出す

まず、その子が何もしていない状態で1日に消費するエネルギー量(RER)を体重から求めます。

RER (kcal/日) = 70 × (体重kg)^0.75

指数計算が難しければ、体重2〜45kgの犬に限り線形近似式も使えます。

RER (kcal/日) = 30 × 体重kg + 70

体重別のRER目安(指数式):

体重RER目安
2kg118 kcal
3kg160 kcal
5kg234 kcal
7kg302 kcal
10kg394 kcal
15kg535 kcal
20kg662 kcal
30kg896 kcal

上記の計算式と数値は Merck Veterinary Manual および AAHA(米国動物病院協会)2021年栄養ガイドラインの推奨にもとづきます。

Step 2. DER係数をかけて、その子の必要量(DER)を出す

RERはあくまで「安静時」の数値。実際の1日の必要量はライフステージや活動量に応じた「DER係数」をかけて求めます。

DER (kcal/日) = RER × 係数(下表)
ライフステージ・状態係数(RER×)出典・備考
子犬(離乳〜4ヶ月未満)3.0Merck / AAHA(一致)
子犬(4〜9ヶ月)2.5段階的に低下(アニコム損保・獣医監修)
子犬(9〜12ヶ月、成犬体重50%以降)2.0Merck / Hemopet
成犬・未去勢/未避妊1.8Merck / AAHA / アニコム
成犬・去勢/避妊済み1.6Merck / AAHA(採用値)
成犬・不活発・肥満傾向1.2〜1.4Merck / アニコム
成犬・活発(毎日1時間以上の運動)1.8〜2.0Hemopet / VCA
減量中1.0(RERのみ)Merck / dvm360
シニア(活動量低下)1.1〜1.4アニコム損保ほか国内獣医監修ソース(Merckにシニア単独の係数表はなく、国内獣医監修情報との照合値を採用)
妊娠後期(40日目以降)2.0〜2.5VCA(CAVN監修)
授乳中3.0 + 0.5×子犬頭数dvm360 / Merck

係数には±30%の個体差があるというのが大前提です。メタ解析(PMC4196927)では去勢で平均25%の代謝低下が報告されており、係数はあくまで出発点です。体型(BCS)を見ながら調整を続けることが欠かせません。なお妊娠・授乳中は係数の幅が大きく必要量が大きく変わる時期なので、自己判断で量を決めず、獣医師の指導のもとで管理してください。

Step 3. 給与量(g/日)に換算する

DERが出たら、フードのカロリーで割って与える量(グラム)を計算します。

給与量(g/日) = DER ÷ フード100gあたりのkcal × 100

フードのカロリー(ME:代謝エネルギー)はパッケージの成分表示に記載されています。ドライフードはおよそ280〜480 kcal/100g、ウェットフードは70〜130 kcal/100gと幅があるため、必ずパッケージの数値を使ってください。

計算例(体重10kg・去勢済み成犬・フードのME 350 kcal/100g): RER = 394 kcal → DER = 394 × 1.6 ≒ 630 kcal → 給与量 = 630 ÷ 350 × 100 ≒ 180 g/日

これらの計算をその場でまとめて出せるのが、給餌量・カロリー計算ツールです。体重・ライフステージ・避妊去勢・活動量を入力するだけで、DER・給与量・フードが何日持つかを一括で出せます。

ライフステージ別の給餌量の考え方

子犬期:成長に合わせて量を変え続ける

子犬は成長のために成犬の2〜3倍のエネルギーを必要とします。ただし成長は直線ではなく、月齢が上がるにつれて係数が段階的に下がります。4ヶ月未満は3.0倍、4〜9ヶ月は2.5倍、9〜12ヶ月は2.0倍——と定期的に体重を計り直し、その月齢に合った係数で見直すことが必要です。

成犬のサイズが小型犬(成犬体重10kg未満)と大型犬(25kg以上)では、成長スピードや成犬になるタイミングが大きく異なります。超大型犬は成犬になるのに2年近くかかることもあり、その分長く子犬期の給餌管理が続きます。

超小型犬(チワワ・ヨーキーなど)の子犬は特に注意が必要です。食事を抜くと低血糖を起こすことがあるため、成犬より慎重に食事間隔と量を管理してください。

成犬期:去勢・避妊後の体重増に注意

成犬で最もよくある見直しポイントが「去勢・避妊手術後」です。ホルモンの変化により基礎代謝が低下し、同じ量を続けると体重が増えやすくなります。Berminghamらの2014年メタ解析(PMC4196927)では去勢で平均25%の代謝低下が確認されており、手術後1〜2ヶ月は体型を注意深く観察することが大切です。

活動量も大きな変数です。毎日1時間以上の運動をしている活発な犬と、ほぼ室内で過ごす不活発な犬では、同じ体重でも適正量が30〜40%変わることがあります。

シニア期:「食べてほしい」と「太らせすぎない」のバランス

7歳以降(犬種・体格によって異なります)のシニア犬は、活動量の低下に合わせて必要エネルギーが減ることが多く、係数は1.1〜1.4が目安とされています。同時に、筋肉を維持するためのたんぱく質は成犬期と同等以上必要とされており(WSAVA グローバル栄養ガイドライン)、カロリーを抑えながらたんぱく質密度を保つフード選びが重要になってきます。

シニア向けフードの選び方はシニア犬のドッグフードの選び方・比較でまとめています。

体型(BCS)で調整する——数字だけに頼らない

計算で出た量はあくまで出発点です。実際の適正量は、体型を見て調整します。

BCS(ボディコンディションスコア)は、体型を1〜9(または1〜5)のスコアで評価する指標です。WSAVA(世界小動物獣医師会)が推奨する標準は「BCS 4〜5(9段階)」で、次のような状態が目安とされています。

BCS段階体型の目安対応
1〜3(痩せ)肋骨・腰骨が見て分かるほど突出している給餌量を増やし、体重変化を追う
4〜5(適正)触ると肋骨が分かるが、上から見ても横から見ても体型が整っている現状を維持
6〜7(過体重)肋骨が触りにくく、腰のくびれが分かりにくい10〜15%減量して様子を見る
8〜9(肥満)肋骨が分からない、腹部が垂れている獣医師相談の上で減量プランを立てる

BCSは自宅でも確認できますが、正確なスコアリングは慣れが必要です。迷うときはかかりつけの獣医師やトリマーに教えてもらうのが確実です。

肋骨や腰骨の触れ具合を確認している飼い主と、リラックスした姿勢の犬の写真
BCSは毎月同じ手順で触って確認する習慣を作ると、変化に気づきやすくなります。

体重管理の実践:測り方と記録

体型管理の基本は「定期的に計り、記録する」ことです。

  • 頻度: 月に1〜2回が基本。成長期の子犬・ダイエット中・シニアは週1回
  • 測り方: 自分が抱いてから体重計に乗り、自分の体重を引く(小型犬)。大型犬は動物病院のスケールか、ペット専用の体重計を利用する
  • 変化の目安: 1〜2週間で体重の5%以上の増減があれば、受診の相談を検討してください

体重を記録すると、季節による変動・フード変更後の反応・老化に伴う変化が見えてきます。

飼い主

同じ量を与えているのに、去勢してから少しずつ太ってきた気がします。

編集部

去勢後はホルモン変化で代謝が落ちやすく、同じ量でも体重が増えやすくなります。まずは体型(BCS)を確認して、肋骨が触りにくくなってきているようなら、現在の量から10〜15%ほど減らして様子を見るのが一般的な目安です。

減らしても体重が戻らない、元気が落ちた、食欲が急に変わったといった場合は、自己判断で続けるより受診して相談を。体重増加の背景に別の原因が隠れていることもあります。

おやつのカロリーも忘れずに

計算した給餌量に、おやつのカロリーを別で加算しないようにしてください。1日のエネルギー量(DER)はおやつを含めた合計です。

一般に、おやつのカロリーは1日のDERの10%以内に抑えることが推奨されています(WSAVA)。おやつを多く与える日は、その分フードの量を調整することが大切です。

おやつを含めたコスト全体の見通しはドッグフード コスパ比較ツールで確認できます。

食欲がない・急な体重変化は「食事量の調整」より先に確認を

給餌量を管理していても、急に食欲が落ちたり体重が変わったりすることがあります。こういった変化は、フードの量を変えることより先に、変化の原因を確かめることが先決です。

  • 🔴 ぐったりしている・震えている・けいれんがある(とくに子犬・超小型犬。低血糖のおそれ。時間を待たずに受診してください)
  • 🔴 まったく食べない+腹部がふくれて空えずきをくり返す(胃捻転のおそれ。夜間でも救急を受診してください)
  • 🟠 成犬で食欲不振が48時間以上続く(完全に食べない・持病がある・他の症状をともなう場合はより早めに)
  • 🟠 子犬・老犬で24時間以上食べない
  • 🟠 1〜2週間で体重の5%以上が急減している
  • 🟡 食べているが2〜4週間で体重が目に見えて変わってきた(意図しない変化は早めに相談を)
  • 🟡 多飲多尿をともなう(腎臓・糖尿病・ホルモン疾患の可能性)

上記の受診の目安は、Merck Veterinary Manual・AAHA 2021年栄養ガイドライン・WSAVA グローバル栄養ガイドラインなど獣医学分野の一般的な参考にもとづいています。実際の判断は、その子の年齢・持病・状態によって変わります。

食欲不振の原因の見分け方・対処法は犬が食欲ない・ご飯を食べないときでまとめています。

フード切り替え時の量の移行

給餌量を変えるタイミングとして見落とされがちなのが「フードを切り替えるとき」です。新しいフードはカロリー密度が異なることが多く、前のフードと同量(グラム)を与え続けると、カロリー過剰や不足になることがあります。

新しいフードへの移行は7〜10日かけてゆっくり行うのが基本です。移行スケジュールの目安はフード切り替えスケジュール作成ツールで犬の状態に合わせて作れます。

計算で迷ったらツールで

ここまでの計算手順を一括でまとめて出せるのが給餌量・カロリー計算ツールです。体重・ライフステージ・避妊去勢・活動量を入れるだけで、DER・1日の給与量(g)・フードが何日持つか・1日のエサ代の目安が出ます。

計算結果は出発点です。ツールが出した量を試しながら、月に1〜2回の体重チェックとBCS確認を続けて、その子に合った量を見つけてください。

よくある質問

給餌量とカロリー管理について、よく寄せられる疑問をまとめました。いずれも一般的な目安で、その子の年齢・体型・持病によって対応は変わります。迷うときはかかりつけの獣医師にご相談ください。


参考にした主な情報源

  • Merck Veterinary Manual(エネルギー必要量・ライフステージ別栄養の項)
  • AAHA 2021 Nutrition and Weight Management Guidelines / Nutritional Assessment Guidelines
  • WSAVA Global Nutrition Guidelines(2011, JSAP)
  • NRC 2006 Nutrient Requirements of Dogs and Cats
  • Bermingham et al. 2014(PMC4196927)去勢と代謝低下に関するメタ解析
  • 環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」(2018)
  • アニコム損保(RER/DER係数・獣医監修)

本記事は一般的な情報であり、診断・治療に代わるものではありません。気になる症状が続くときは、かかりつけの動物病院にご相談ください。

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